韓国で目上の人と乾杯するとき、自分のグラスを相手より少し低く構える光景を見たことはありませんか。この所作の背景には、年齢や上下関係を重んじる韓国ならではの価値観があります。

グラスを下げるのは、敬意のしるし

表現 読み方 意味
건배! コンベ 乾杯!

乾杯の掛け声「건배(コンベ)」自体はシンプルですが、グラスを合わせる所作には細やかな作法があります。目上の人とグラスを合わせるときは、自分のグラスの縁を相手のグラスより低い位置に構えるのが基本。「あなたを立てています」という無言のメッセージが込められています。

注ぐときも、受けるときも両手で

お酒を注ぐときは、瓶を持つ手をもう片方の手で軽く支えるのが丁寧な作法。目上の人から注いでもらうときも、グラスを両手で持つのが礼儀です。片手で無造作に受け取ると、失礼にあたることがあります。

お酒の席にも、上下関係のルールがある

韓国のお酒の席には、乾杯の作法以外にも細かな決まりごとがあります。目上の人がグラスを空けるまで先に飲み始めない、目上の人にお酌をお願いされたら断らない、自分のグラスが空になったら自分で注がず相手に注いでもらうのを待つ、といった暗黙のルールが今も根強く残っています。こうした作法は職場の飲み会で特に意識されますが、観光客が体験する機会は限られており、知らなくても旅行そのものに支障が出ることはほとんどありません。

飲むときは顔を横に

目上の人の前でお酒を飲むときは、少し顔を横に向けて口元を隠すようにするのが伝統的なマナー。儒教の影響を受けた年功序列の文化が、こうした細やかな所作に表れています。旅行者が完璧にこなす必要はありませんが、知っておくと現地の人との食事がより気持ちよいものになります。

アジコトのレッスンでは、こうした食事の場面でのマナーとフレーズをあわせて紹介しています。

「원샷」――グラスを一気に空ける文化

表現 読み方 意味
원샷! ウォンシャッ 一気飲み!(英語one shotから)

韓国のお酒の席では、乾杯のあとに「원샷!(ウォンシャッ)」の掛け声とともにグラスを一気に空ける場面がよく見られます。盛り上がりの一環として自然に行われる習慣ですが、無理に一気飲みをする必要はなく、「저는 천천히 마실게요(私はゆっくり飲みますね)」と伝えれば、自分のペースで楽しむことも問題なく受け入れられます。

儒教の影響は、乾杯以外にも表れている

年長者を敬う所作は、乾杯の場面に限らず韓国社会のさまざまな場面に見られます。年上の人より先にエレベーターや車から降りない、目上の人と歩くときは少し後ろか横に控える、といった細やかな配慮もその一例です。これらは朝鮮王朝時代に国の統治理念として根づいた儒教の影響が、現代の暮らしの中にも脈々と受け継がれてきた結果だと考えられています。堅苦しく感じるかもしれませんが、その根底には「年長者の経験を敬う」という素朴な価値観があります。

「소맥」――焼酎とビールを混ぜる乾杯文化

表現 読み方 意味
소맥 말아 주세요 ソメク マラ ジュセヨ ソメクを作ってください

韓国の酒席で欠かせないのが、焼酎(소주)とビール(맥주)を混ぜた「소맥(ソメク)」。「소」と「맥」はそれぞれの頭文字で、日本語では「爆弾酒」と呼ばれることもあります。焼酎3・ビール7ほどの割合で作るのが定番とされ、幹事役やその場のいちばん盛り上げ上手な人が、スプーンや箸でグラスを叩いてリズムよく混ぜる、ちょっとしたパフォーマンスも見どころのひとつ。焼酎は韓国で飲まれるお酒全体の消費量の多くを占めるとされる、まさに国民的なお酒で、そこにビールの爽快感を加えたソメクは、乾杯の場をさらに盛り上げる欠かせない存在になっています。

誰から注ぐ?――お酌にも決まった順番がある

お酒の席が始まるとき、最初にグラスを差し出すのは誰か、という点にも暗黙のルールがあります。基本は「その場でいちばん年長の人、またはその飲み会を設けた(誘った)人」に最初のお酌をするというもの。新入社員が上司より先に自分のグラスに口をつける、というのは避けたい振る舞いとされ、まず場を仕切る人が音頭を取り、その人から順にグラスが行き渡っていくのが自然な流れです。旅行者が現地の飲み会に招かれる機会は多くありませんが、もし同席することがあれば、周りの様子を少し観察してからグラスに手を伸ばすと、スムーズに輪に加わることができます。

飲みすぎた人への気配りも、酒席の作法のうち

お酒の席の作法は、注ぐ・受けるといった所作だけにとどまりません。一緒にいる人が飲みすぎているようであれば、さりげなく水を勧めたり、体調を尋ねたり、帰り道のタクシーを手配してあげたりと、最後まで気を配るのも大切なマナーとされています。特に立場が上の人ほど、周囲への気遣いを見せることが評価される傾向があり、単に「上下関係を守る」だけでなく「お互いを思いやる」ことが韓国の酒席文化の根っこにあると言われています。旅行者同士で盛り上がる場面でも、この「最後まで気にかける」精神を意識してみると、より気持ちよい時間になります。

「소맥」だけじゃない、酒席を盛り上げる폭탄주のバリエーション

焼酎とビールを混ぜる「소맥(ソメク)」がもっとも定番ですが、韓国の酒席にはほかにも様々な「폭탄주(ポクタンジュ=爆弾酒)」があります。ウイスキーの小さなグラスをビールで満たした大きなグラスにそっと沈めて作る一杯は、グラスが潜水艦のように沈む様子から「タイタニック」とも呼ばれる人気の作り方。会社の宴会などでは、より難易度の高い作り方を披露して場を盛り上げる人もいるほど、폭탄주づくり自体がちょっとした余興になっています。もちろん、こうした一気飲み系の酒は無理に付き合う必要はなく、自分のペースで楽しむのがいちばんです。

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ポジャンマチャの屋台文化についてはポジャンマチャの屋台文化と、乾杯のマナー、乾杯の4言語比較は「乾杯」を4言語でもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 友人同士のカジュアルな飲み会でも必要な作法ですか?
同年代の友人同士であれば、それほど堅苦しく考える必要はありません。目上の人や初対面のフォーマルな場面で特に意識されるマナーです。

Q. 知らずに片手で受け取ってしまったら失礼になりますか?
外国人旅行者であれば、大きく問題視されることはほとんどありません。知ろうとする姿勢自体が好意的に受け止められます。

Q. 自分でお酒を注いでもいいですか?
フォーマルな席では、自分で自分のグラスに注ぐのは避けたほうがよいとされています。周りの人が注いでくれるのを待つのが一般的な作法です。

Q. 「원샷」を断っても失礼になりませんか?
お酒が苦手な場合や自分のペースで飲みたい場合は、丁寧に断って問題ありません。無理に飲み干すことより、気持ちよく席を囲むことの方が大切にされています。

Q. 「소맥」はどんな割合で作るのが一般的ですか?
焼酎3割・ビール7割ほどが定番とされていますが、お店や人によって好みの割合はさまざまです。作ってもらったら、まずは一杯素直に楽しんでみましょう。

Q. 最初のお酌は誰にすればいいですか?
その場でいちばん年長の人、または飲み会を設けた人に最初にお酌をするのが基本です。迷ったら周りの様子を見てから動くと安心です。

Q. 一緒にいる人が飲みすぎてしまったら、どうすればいいですか?
水を勧めたり、体調を気にかけたりするのが自然な対応です。帰りが心配なら、タクシーを一緒に手配してあげると喜ばれます。