世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア。食事の場面では、ハラル(イスラム法で許されたもの)への配慮が暮らしの隅々に息づいています。旅先で知っておきたい基本マナーを見ていきましょう。
「ハラルですか?」と確認する
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Apakah ini halal? | アパカ イニ ハラル | これはハラルですか? |
豚肉やアルコールを避けるハラルの考え方は、レストランのメニューにも「Halal」マークとして表示されていることが多く、目印になります。混在するメニューで迷ったら、この一言で確認してみましょう。
屋台やレストランでの見分け方
ハラルかどうかを見分ける手がかりは、店頭に掲げられた認証マークだけではありません。イスラム教徒が経営する屋台の多くは、豚肉を扱う店とは明確に区別された食材や調理器具を使っています。逆に「Babi(バビ=豚肉)」という文字がメニューに含まれている店は、非ムスリム向けの店であることが多く、中華系の食堂などで見かけることがあります。旅行者としては、この単語を覚えておくだけでも、店選びの手がかりが増えます。
断食月「プアサ」の時期
イスラム暦の断食月には、日中は飲食を控える「puasa(プアサ)」が行われます。この時期に人前で飲食をするのは控えめにするのが望ましいマナー。日没後には「buka puasa(ブカプアサ=断食明けの食事)」で賑わう屋台や食堂も、この時期ならではの風物詩です。
「インシャアラー」に込められた考え方
予定の話をするとき、「Insya Allah(インシャアラー)=神が望むならば」という言葉がよく添えられます。未来のことは人智を超えているという価値観が、日常の会話にもさりげなく表れています。約束をする場面でこの言葉を耳にしても、驚かず自然な返事として受け止めましょう。
アジコトのレッスンでは、食事の場面で使えるフレーズを紹介しています。
「ハラル認証マーク」の仕組み
インドネシアでは、飲食店や商品にハラル認証マークを表示する仕組みが整っています。国の機関であるBPJPH(ハラル製品保証庁)が中心となって認証手続きを担い、イスラム法学者による審査などを経て、認証を受けた商品や飲食店に公式のロゴが表示されます。街で見かけるこのロゴは、豚肉やアルコールを含む成分が使われていないことを示す、旅行者にとっても分かりやすい目印です。
今まさに広がりつつある、認証の義務化
ハラル認証は、これまで任意で取得する事業者が多い仕組みでしたが、インドネシアでは近年、段階的に義務化が進められています。大企業や中堅企業を対象にした義務化はすでに始まっており、街の屋台や個人商店のような小規模事業者についても、認証取得の猶予期限が定められ、対応が進められている最中です。つまり今この記事を読んでいる時点は、インドネシアの外食産業全体でハラル認証の取得がまさに広がりつつある過渡期にあたります。今後さらに多くの店にハラルマークが掲示されるようになれば、旅行者にとっても店選びがますます分かりやすくなっていくはずです。
「ブカ・ブルサマ」――みんなで断食を明ける文化
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Buka bersama | ブカ ブルサマ | みんなで一緒に断食を明けること |
プアサ期間の日没時には「buka bersama(ブカ・ブルサマ)」と呼ばれる、友人や同僚と連れ立って断食を明ける食事会が盛んに行われます。普段はなかなか会えない旧友を誘ったり、職場の親睦を深めたりする貴重な機会としても大切にされており、レストランや屋台はこの時間帯に向けて特別な賑わいを見せます。旅行者がこの時間帯にレストランへ入ると、周囲のテーブル全体が日没の合図(アザーン)を静かに待っている、という場面に出くわすこともあります。そうした状況では、自分たちだけ先に食事を始めるのは控え、周りのタイミングに合わせるのが望ましい配慮とされています。
断食月の食卓に並ぶ、特別なメニュー
ブカ・ブルサマの食卓には、普段よりも豪華な料理が並ぶのが習わしです。まずはナツメヤシの実「kurma(コルマ)」や甘い飲み物で軽く空腹を満たし、それから本格的な食事に移るのが伝統的な断食明けの流れ。この時期は屋台やレストランのメニューにも、断食月ならではの特別な軽食や飲み物が並ぶことが多く、旅行者にとっても普段とは違う食文化に触れられる面白い時期でもあります。日中の営業時間が変則的になる店もあるため、事前に確認しておくと安心です。
断食月の夕方に現れる、「パサール・タクジル」という市
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| pasar takjil | パサール タクジル | 断食明けの軽食を売る、ラマダン期間限定の市 |
プアサの期間中、日没が近づく午後になると、モスクの周辺や通り沿いに「pasar takjil(パサール・タクジル)」と呼ばれる期間限定の市が現れます。「takjil(タクジル)」はもともと断食明けに口にする軽い軽食を指す言葉で、揚げ物や甘いお菓子、色とりどりの飲み物などがずらりと並ぶ光景は、この時期ならではの風物詩。夕方まで待ちきれずに市を歩き回る「ngabuburit(ンガブブリッ)」という時間の過ごし方自体も、断食月の楽しみのひとつとされています。旅行者もこうした市を覗いてみれば、断食月ならではの活気ある雰囲気を味わうことができます。
参考
本記事で言及した機関:
- BPJPH(ハラル製品保証庁) ― インドネシア政府のハラル認証手続きを所管する機関
関連記事
屋台(ワルン)での注文フレーズはインドネシアの屋台(ワルン)で使う注文フレーズひとこと、多民族国家の多様性については多民族国家インドネシア、言語がこんなに多様な理由もあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. 断食月に旅行者も配慮する必要がありますか?
屋外での飲食は控えめにし、レストランの営業時間が変わることもあるため事前確認がおすすめです。ホテル内や観光客向けの店では通常営業していることも多いです。
Q. ハラルでない料理を注文するのは失礼ですか?
観光客向けの店では問題ないことがほとんどです。地域や店によって対応が異なるので、心配な場合は確認するのが安心です。
Q. 「Babi」という単語はメニューでどう使われていますか?
「Babi」は豚肉を意味する単語で、非ムスリム向けの店のメニューに登場することがあります。この単語が見当たらない店は、ハラルである可能性が高い目安になります。
Q. ハラル認証マークは誰が発行していますか?
インドネシアではBPJPH(ハラル製品保証庁)などの公的機関がハラル認証の手続きを担っており、審査を経た商品や飲食店には公式のロゴが表示されます。
Q. ハラルマークがない屋台は避けるべきですか?
認証取得がまだ進んでいない小規模店も多いため、マークがない=ハラルでない、とは限りません。心配なときは、店員に直接「Apakah ini halal?」と確認するのが確実です。
Q. 断食月にレストランへ入るとき、気をつけることはありますか?
日没直前の時間帯は、周囲が断食明けの合図を待っていることがあります。自分たちだけ先に食事を始めず、周りの様子を見てタイミングを合わせるとよいでしょう。
Q. 「パサール・タクジル」はいつ、どこに現れますか?
断食月(プアサ)の期間中、日没前の午後にモスク周辺や通り沿いに現れる期間限定の市です。旅行中にラマダン期間と重なったら、ぜひ覗いてみる価値があります。