同じインドネシアでも、ヒンドゥー教徒が多いバリ島と、イスラム教徒が多い本土ジャカルタでは、挨拶の言葉やニュアンスが少し異なります。その違いを見ていきましょう。
バリ島独自の挨拶
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Om Swastyastu | オム スワスティアストゥ | バリ・ヒンドゥーの伝統的な挨拶(こんにちは) |
バリ島ではヒンドゥー教に根ざした独自の挨拶「Om Swastyastu(オム・スワスティアストゥ)」が使われることがあります。両手を胸の前で合わせながら伝えると、より丁寧な印象に。もちろん共通語のインドネシア語で挨拶しても問題ありません。
ジャカルタでは、共通語の挨拶が基本
本土ジャカルタでは、イスラム教徒が多数を占めることもあり、時間帯に応じた「Selamat pagi/siang/sore/malam(おはよう/こんにちは/こんばんは)」という共通語の挨拶が一般的です。バリ島でもこれらの表現はもちろん通じます。
バリ島特有のカースト的な呼び名も
バリ島の一部の家庭では、生まれた順番によって名付けられる伝統的な名前の仕組みが今も残っています。長子は「Wayan(ワヤン)」、次子は「Made(マデ)」、三子は「Nyoman(ニョマン)」、四子は「Ketut(クトゥッ)」というように、兄弟の生まれ順そのものが名前の一部になる文化です。観光地でこうした名前を持つ現地スタッフに出会うことも多く、名前の意味を尋ねてみると、思いがけない会話のきっかけになります。
島によって異なる、信仰と暮らしの色
バリ島の街角には毎日お供え物「チャナン・サリ」が置かれ、独自の寺院文化が息づいています。一方ジャカルタでは、モスクからの礼拝の呼びかけが街の日常に溶け込んでいます。同じ国でも、島ごとに異なる信仰と暮らしの色を感じられるのが、インドネシア旅行の面白さのひとつです。
アジコトのレッスンでは、共通語としてのインドネシア語のあいさつを基礎から紹介しています。
寺院を訪れるときの服装ルール、サロン
バリ島の寺院を訪れる際は、肩や膝を覆う控えめな服装が基本のマナーです。特に腰に巻く布「サロン」の着用を求められる寺院が多く、多くの寺院では入口でサロンや帯の貸し出し・レンタルを行っています。ノースリーブやショートパンツで訪れても、その場でサロンを借りれば問題なく参拝できることがほとんど。あらかじめ薄手のストールを一枚持っておくと、急な訪問でも安心です。
バリ語には、相手の身分で変わる話し方まである
挨拶の言葉だけでなく、バリ島には「バリ語」という独自の言語もあり、その敬語システムはインドネシア語よりずっと複雑です。バリ・ヒンドゥーの社会階層(カースト)を背景に、話す相手の身分や親密さによって「普通体」と「丁寧体」を使い分ける仕組みがあり、名詞や動詞そのものが別の単語になることも珍しくありません。家族や親しい友人とは普通体、目上の人や上位の階層の人には丁寧体で話すのが基本ですが、この使い分けを誤ると大きな失礼にあたることもあるため、バリ島出身者同士でも、普段あまり接しない相手とはバリ語ではなくインドネシア語で話すことを選ぶ場合があるほどです。旅行者がバリ語を使う場面はまずありませんが、島の言葉にこれほど繊細な身分意識が組み込まれていると知ると、Om Swastyastuというひとことの挨拶にも、また違った重みが感じられるかもしれません。
年に一度、島全体が沈黙する「ニュピ」という新年
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Nyepi | ニュピ | バリ・ヒンドゥー暦の新年「静寂の日」 |
バリ島には、ジャカルタをはじめとする本土の暮らしとはまったく異なる、独特の新年行事があります。それが「Nyepi(ニュピ)」と呼ばれる「静寂の日」です。夜明けから翌日の夜明けまでの丸一日、島全体で「火や灯りを使わない」「外出しない」「働かない」「娯楽や快楽を慎む」という4つの禁止事項(チャトゥル・ブラタ)が守られ、空港すら閉鎖されるほど徹底しています。ホテルに滞在する旅行者もこのルールに従う必要があり、街を巡回する自警団「プチャラン」の見回りもあるため、うっかり外出してしまわないよう注意が必要です。サカ暦に基づくため日程は毎年変わり、バリ島への旅行日程を組む際は、事前にニュピの日程を確認しておくことを強くおすすめします。
前夜祭「オゴオゴ」でにぎやかに悪霊を追い払う
静まり返るニュピ当日とは対照的に、前日の夜には「オゴオゴ」と呼ばれる巨大な張りぼての魔物人形を担いだ、にぎやかなパレードが島じゅうで繰り広げられます。地域の若者たちが趣向を凝らして作り上げるオゴオゴは、島に潜む悪霊を音楽や熱気で追い払うための儀式とされ、翌日からの静寂な一日と好対照をなす、バリ島ならではの光景です。旅行者にとっても、パレードを見物できる貴重なタイミングであり、静寂の日そのものと合わせて体験すると、バリ・ヒンドゥーの新年行事の全体像がより深く感じられます。
バリの暮らしを貫く哲学、「トリ・ヒタ・カラナ」
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Tri Hita Karana | トリ ヒタ カラナ | 幸福をもたらす3つの調和(神・人・自然との関係) |
Om Swastyastuというあいさつの背景には、バリ・ヒンドゥーの根幹をなす「Tri Hita Karana(トリ・ヒタ・カラナ)」という考え方があります。サンスクリット語で「tri(3つ)+hita(幸福)+karana(原因)」を意味するこの哲学は、①神との調和(parhyangan)、②人との調和(pawongan)、③自然との調和(palemahan)という3つのバランスが保たれてこそ、真の幸福が得られると説きます。毎日の供物チャナン・サリを捧げる行為は神との調和、助け合いの精神ゴトンロヨンは人との調和、田んぼの水を分かち合う伝統的な灌漑システム「スバック」は自然との調和の表れとされ、バリ島の暮らしのあらゆる場面にこの3つの調和の思想が息づいています。
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よくある質問
Q. バリ島でOm Swastyastuを使わないと失礼ですか?
いいえ、共通語のインドネシア語の挨拶で全く問題ありません。使ってみれば喜ばれることもある、という程度に捉えておきましょう。
Q. バリ島の宗教はジャカルタと違いますか?
はい。インドネシア全体はイスラム教徒が多数派ですが、バリ島はヒンドゥー教徒が多く、寺院文化や儀礼が色濃く残る独自の島です。
Q. 「ワヤン」や「マデ」という名前をよく聞くのはなぜですか?
バリ島の伝統的な名付けでは、生まれた順番によって使われる名前が決まっているためです。同じ名前の人が多いのはこの慣習が理由です。
Q. バリ島の寺院に入るときの服装マナーはありますか?
肩や膝を覆う服装が基本で、腰に巻く布「サロン」の着用を求められる寺院も多く、入口で貸し出しをしている場合もあります。
Q. バリ語とインドネシア語は同じ言葉ですか?
いいえ、別の言語です。バリ島の人々は日常的にバリ語とインドネシア語を使い分けており、旅行者と話すときは共通語のインドネシア語が使われます。
Q. ニュピの日にバリ島にいたら、どう過ごせばいいですか?
ホテル内で静かに過ごすのが基本です。事前に飲食物を用意しておき、外出せずリゾート内で読書や昼寝、星空を眺めるなど、普段できないゆったりとした時間を楽しむ旅行者が多いです。
Q. 「トリ・ヒタ・カラナ」とはどんな考え方ですか?
神・人・自然という3つとの調和が幸福をもたらす、というバリ・ヒンドゥーの根本的な哲学です。バリ島の儀礼や暮らしの多くの場面が、この考え方に基づいています。