ハノイやホーチミンの街角に立つと、まず驚くのがバイクの数。信号待ちの交差点を埋め尽くすバイクの波は、ベトナムを象徴する風景のひとつです。バイク文化と、道路を渡るコツを見ていきましょう。
「セーオム」、バイクタクシーという相棒
| 表現 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| Từ từ thôi ạ | トゥートゥー トーイ ア | ゆっくりお願いします |
ベトナム名物のバイクタクシーは「xe ôm(セーオム)」と呼ばれ、直訳は「抱きつきバイク」。今はGrabのバイク版が主流で、ヘルメットも貸してくれます。すり抜けるように進む爽快感はベトナムならではですが、スピードが気になったら「Từ từ thôi ạ(ゆっくりお願いします)」の一言を。
道路を渡るコツ
バイクの波が途切れない道路を渡るときのコツは、立ち止まったり走ったりせず、一定の速さで歩き続けること。バイクの運転手は歩行者の速度を見ながら自然によけてくれるので、こちらが急に止まったり動きを変えたりすると、かえって危険です。最初は勇気が要りますが、地元の人の後ろについて一緒に渡るのがいちばん安心です。
バイク保有率の高さが生んだ独自の交通文化
ベトナムは人口あたりのバイク保有率が世界でも高い国のひとつとされ、その数の多さが独自の交通文化を生み出しています。信号機の少ない交差点でも大きな混乱が起きにくいのは、ドライバー同士がお互いの動きを常に読み合いながら走る、暗黙のルールが根づいているからだと言われています。雨の日にはカラフルなポンチョ姿のドライバーが道路を埋め尽くす光景も、ベトナムならではの風物詩です。バイクの数の多さは大気汚染や交通事故といった課題にもつながっており、都市部では電動バイクへの切り替えを促す動きも進んでいます。
バイクは家族の乗り物でもある
ベトナムでは1台のバイクに家族3〜4人が乗る光景も珍しくありません。通勤・通学はもちろん、荷物の配達、果ては家具の運搬までバイクひとつでこなしてしまう、暮らしに欠かせない存在です。街を歩きながらバイクの荷台に積まれたものを観察してみるのも、旅の楽しみのひとつになります。
アジコトの「動く」ステージでは、こうした移動シーンのフレーズを紹介しています。
2007年、ヘルメット着用が義務化された
今では当たり前の光景となったベトナムのヘルメット着用ですが、これが法律で義務化されたのは2007年のこと。それ以前はヘルメットなしでバイクに乗る人も多く、交通事故による被害の大きさが社会問題になっていました。義務化から短期間で着用率が大きく上昇したことは、国内外でも交通安全政策の成功例として語られることがあります。子どもを含む同乗者にもヘルメット着用が求められるのが基本です。
数字で見る、バイク大国ベトナム
ベトナムのバイク保有率を示す調査では、国民の7割超がバイクを所有しているという結果が示されており、世界的に見ても最高水準の普及率とされています。全国の登録台数は7千万台を超えるとも言われ、単純計算では人口の大半が1台ずつバイクを持っている計算になります。調査機関や時期によって細かな順位は変わるものの、東南アジアの中でもベトナムのバイク依存度の高さは際立っており、公共交通機関が発展途上の地方都市ほど、バイクが唯一の足として暮らしを支えています。近年は都市部を中心にバス路線や地下鉄の整備も進んでいますが、当分はバイクがベトナムの移動の主役であり続けそうです。
クラクションは威嚇ではなく、「ここにいるよ」の合図
ベトナムの街を歩いていると、バイクや車のクラクションが絶え間なく鳴り響くことに驚く旅行者は少なくありません。ただしこれは、日本のクラクションのように相手への警告や苛立ちを表すものとは少し意味合いが異なります。交通量の多いベトナムでは、追い越しや合流の直前に軽くクラクションを鳴らし、「ここにいますよ」と自分の存在を周囲に知らせる、コミュニケーションの一種として使われているのが実情です。慣れないうちは騒がしく感じられるかもしれませんが、これも密集した交通の中で事故を防ぐための工夫のひとつだと分かると、街の音の聞こえ方が少し変わってくるはずです。
広がる電動バイク、VinFastの存在感
近年のベトナムの街では、地場の自動車・バイクメーカー「VinFast(ビンファスト)」の電動バイクを見かける機会が急速に増えています。学生層など若い世代向けに手頃な価格のモデルを展開し、バッテリーを購入せずレンタルする仕組みで初期費用を抑えるなど、普及を後押しする工夫がされているのが特徴です。自社グループの配車サービスに電動バイクを積極的に走らせることで街なかでの認知度を高める戦略も採られており、ホンダをはじめとするガソリンバイクの牙城に食い込みつつあります。一方で、バッテリーの発火事故が報じられることもあり、安全性の担保は今後の課題として指摘されています。旅先で見慣れないロゴのバイクを見かけたら、こうした世代交代の途中だと考えると面白い発見になります。
「ホンダ」が代名詞になった、Honda Cubの歴史
ベトナムでバイクそのものを指して「Honda(ホンダ)」と呼ぶ人が今も多いのには理由があります。ベトナム戦争終結後、長期間にわたって欧米諸国からの経済制裁・禁輸措置が続いた時代、正規輸入が止まっていたにもかかわらず、Honda Super Cub(スーパーカブ)は非公式ルートで持ち込まれ続けたといわれるほどの人気を誇りました。当時は非常に高額で、所有すること自体が豊かさの象徴とされていたというエピソードもあるほどです。1990年代に入り経済開放とともに正規販売網が整うと、より大きなエンジンを積んだ後継モデル「Honda Dream(ドリーム)」が爆発的に普及し、今のバイク大国ベトナムの土台を築きました。今も現役で走り続けるカブを街で見かけたら、それは数十年分のベトナムの経済史を乗せて走っているのかもしれません。
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よくある質問
Q. 道路を渡るのが怖いのですが、コツはありますか?
地元の人が渡るタイミングに合わせて、一緒に渡らせてもらうのがいちばん安心です。慣れないうちは無理せず、信号や横断歩道のある場所を選びましょう。
Q. バイクタクシーとGrabバイク、どちらが安心ですか?
Grabバイクはアプリ上で料金があらかじめ分かり、運転手の評価も確認できるため、旅行者には安心感があります。
Q. 雨の日の移動はどうすればいいですか?
雨季には突然のスコールが多いため、車のGrabカーを選ぶか、近くの軒先で雨宿りしながらタイミングを見計らうのが現実的です。
Q. 旅行者もヘルメット着用は必須ですか?
はい、法律上は同乗者にも着用義務があります。Grabバイクを利用する場合も、運転手から渡されたヘルメットをきちんと着用しましょう。
Q. バイクの保有台数はこれからも増え続けますか?
都市部では公共交通機関の整備や電動バイクへの切り替えも進んでおり、増加ペースには変化が見られます。ただ地方も含めた国全体で見れば、当面はバイクが移動の中心であり続けると考えられています。
Q. クラクションをたくさん鳴らされたら、危険信号だと思うべきですか?
必ずしもそうとは限りません。多くの場合は「近づいています」という合図なので、落ち着いて周囲の状況を確認すれば大丈夫です。
Q. なぜベトナムではバイクのことを「ホンダ」と呼ぶことがあるのですか?
禁輸期間中も非公式に持ち込まれ続けたHonda Super Cub・Dreamがあまりに普及したため、ブランド名がバイクそのものの代名詞のように定着したといわれています。