ベトナム最大の行事「Tết(テト)」は、旧暦の正月にあたる一大イベント。街中が花や飾りで彩られ、離れて暮らす家族が一斉に故郷へ戻ります。テトの挨拶に込められた家族観を見ていきましょう。

新年の挨拶

表現 読み方 意味
Chúc mừng năm mới チュック ムン ナム モイ あけましておめでとうございます

「Chúc(祝う)+mừng(喜ぶ)+năm mới(新年)」という組み立て。家族や親戚、近所の人と顔を合わせるたびに交わされる、テト期間の定番の挨拶です。

「リーシー」お年玉文化

テトに欠かせないのが「lì xì(リーシー)」と呼ばれる赤い封筒に入ったお年玉。年長者から子どもへ、また目上の人へ健康や幸運を願う気持ちを込めて渡されます。赤色は幸運を呼ぶ色とされ、封筒のデザインにもこだわりが見られます。

三日間続く、テトならではの過ごし方

テトは元日だけでなく、前後数日にわたる長い行事として祝われます。大晦日にあたる夜は「Giao thừa(ザオトゥア)」と呼ばれ、家族そろって新年を迎える特別な瞬間です。元日は家族水入らずで過ごし、2日目以降は親戚や友人、恩師のもとを訪ねて新年の挨拶を交わすのが伝統的な過ごし方とされています。誰が新年最初にその家を訪れるかという「xông đất(初訪問)」の習慣もあり、縁起の良い人に最初に来てもらうことを願う家庭も少なくありません。

家族が集まる、年に一度の大移動

テトの時期は、都市部で働く人々が一斉に故郷へ帰省するため、交通機関が大混雑します。先祖を祀る仏壇に花や果物を供え、家族全員で新年を祝うのがベトナムの伝統的な過ごし方。離れて暮らす家族が集まる、一年でもっとも大切な時間とされています。

アジコトのレッスンでは、あいさつや感謝の基本フレーズを紹介しています。

北はモモ、南はマイ――地域で違う正月の花

テトの飾りにも南北の違いがあります。北部では薄いピンク色の「hoa đào(ホア・ダオ=桃の花)」を飾るのが伝統的で、寒さの残る北部の気候に合った花木です。一方、南部では黄色い「hoa mai(ホア・マイ)」の花が定番。黄色は繁栄や富を象徴する色とされ、南部の家庭やお店の軒先を彩ります。旅行する地域によって、テトの飾りつけの色合いが変わるのも、南北に長いベトナムらしい発見です。

元日にやってはいけない、テトのタブー

テトには「新年最初の数日にすると縁起が悪い」とされる、いくつかの言い伝えがあります。代表的なのが「元日に掃除をしてはいけない」というもの。せっかく舞い込んできた福やお金を、掃除によって外に掃き出してしまうと考えられているためです。多くの家庭では大晦日までに家じゅうを掃除・整理を済ませておき、元日は掃除道具に触れないようにします。また食器を割ってしまうことも「不運の兆し」として避けられ、割れやすい食器の扱いには普段以上に気を配る人もいます。ほかにも、喪中の人やケガ・病気をしている人はその年最初に他人の家を訪ねるのを控える、という配慮も伝統的に大切にされています。旅行者がこれらをすべて厳密に守る必要はありませんが、宿泊先やホームステイ先でテトを迎える場合は、こうした言い伝えを知っておくと、現地の人の振る舞いの意味がよく分かります。

バインチュン――四角い形に込められた意味

表現 読み方 意味
bánh chưng バインチュン もち米・緑豆・豚肉を葉で包んだテトの伝統料理

テトのごちそうとして欠かせないのが「bánh chưng(バインチュン)」。もち米の中に煮た緑豆と脂身の多い豚肉を入れ、「lá dong(ラーゾン)」という葉できっちり四角く包んで蒸し上げる伝統料理です。この四角い形には、古代の人々が大地を四角いものと考えていたことに由来する意味が込められており、天と地からの恵み、そして先祖への感謝を表しているといわれています。テトが近づくと各家庭で大鍋を囲んでバインチュンを一晩じっくり煮込む光景が見られ、家族総出での準備そのものが、テトならではの団らんの時間になっています。

南部の「バインテット」――同じ料理、違う形

北部で四角いバインチュンが定番なのに対し、南部では同じような具材を使いながら円柱形に包んだ「bánh tét(バインテット)」が主流です。バナナの葉で丸く長く形作られたバインテットは輪切りにして食卓に並べられ、断面の彩りも楽しむ料理。同じテトの伝統料理でも、南北で形がまったく違うというのは、正月の花が桃とマイで分かれるのと同じように、ベトナムの地域性を象徴する面白い違いです。旅先でどちらの形の料理に出会うかで、今自分がいる地域を実感できるかもしれません。

来客をもてなす、「クアイ・ムッ」というお菓子の盆

表現 読み方 意味
khay mứt クアイ ムッ 正月に来客をもてなす、砂糖漬け菓子の盛り合わせ

テトの時期にどの家庭でも用意されるのが、色とりどりの砂糖漬け菓子を丸い盆に盛り合わせた「khay mứt(クアイ・ムッ)」です。冬瓜の種の砂糖漬け(赤色で幸運を象徴)、蓮の実の甘煮、生姜、リンゴ、ピーナッツなど、酸味・辛味・甘味・塩気とさまざまな味が一皿に集まり、一年の四季をも表すとされています。新年のあいさつに訪れた親戚や近所の人にまずこの盆を勧めてもてなすのが習わしで、盆に何をどれだけ盛るかにその家庭の心配りが表れるとも言われています。旅行者がホームステイ先やレストランでテトの飾りつけを目にしたら、ぜひこの盆にも注目してみてください。

関連記事

ベトナムの家族の呼び方は現地のベトナム人と仲良くなるための会話フレーズ、あいさつの4言語比較は「はじめまして」自己紹介フレーズを4言語で比較するもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. テトの時期に旅行するのは避けた方がいいですか?
多くの店が休業し交通機関も混雑するため、観光目的なら時期をずらすのもひとつの選択です。一方でテトならではの飾りつけや雰囲気を体験したい人には貴重な機会でもあります。

Q. テトの時期のあいさつはどう言えばいいですか?
「Chúc mừng năm mới(チュックムンナムモイ=あけましておめでとう)」が定番のあいさつです。

Q. 「xông đất」とはどんな習慣ですか?
新年最初にその家を訪れる人が、その年の運を左右すると考えられている習慣です。縁起の良い人に最初の訪問を頼む家庭もあるほど大切にされています。

Q. 北部と南部でテトの飾りは違いますか?
はい、北部では桃の花「hoa đào」、南部では黄色いマイの花「hoa mai」を飾るのが伝統的です。訪れる地域によって街の彩りが変わります。

Q. テト期間中にホームステイする場合、気をつけることはありますか?
元日の掃除や食器を割ることを避ける言い伝えがあるので、無理に手伝おうとせず、現地の家族のやり方に合わせるのが安心です。分からないことは素直に尋ねれば、丁寧に教えてもらえます。

Q. バインチュンとバインテット、味に違いはありますか?
具材(もち米・緑豆・豚肉)は基本的に同じですが、形と包み方が異なります。旅する地域によってどちらに出会うかが変わるので、食べ比べてみるのも楽しい体験です。

Q. 「クアイ・ムッ」にはどんなお菓子が入っていますか?
冬瓜の種の砂糖漬け、蓮の実の甘煮、生姜、リンゴ、ピーナッツなど、家庭によってさまざまな種類の砂糖漬け菓子が盛り合わされます。それぞれに幸運や健康、家族の団らんなどの願いが込められています。